「甘酒の発酵温度は何度がベスト?」甘酒を作る時の温度管理について

(※このページは2022年8月4日に更新しました。)

甘酒の発酵温度は何度にしたら良いのだろう。」

これは甘酒を作るときの一番の疑問点だと思います。

甘酒を作る時の発酵温度を調べると「50~60℃」「55~60℃」「60℃前後」などいろいろと出てくるため、迷うこともあると思います。

そこで今回は甘酒を作る時の発酵温度について書いていきたいと思います。

糖化酵素「アミラーゼ」の最適温度

甘酒の糖化温度について、村上英也(編著)『麹学』によると、「麹中に含まれるアミラーゼの糖化温度は最適が62℃付近にあり、これ以上に温度が上がるにしたがって力が弱まり、72℃前後では液化作用のみで糖化力が非常に弱まり、それ以上になれば糖化力が破壊されてしまう。」と書かれています。
(村上英也(編著)『麹学』日本醸造協会、平成30年4月5日第6版発行、P445)

このことから甘酒を作るときの発酵温度は、糖化酵素「アミラーゼ」の最適温度である62℃付近に設定することが望ましいことがわかります。

甘酒が甘くなる理由(糖化酵素「アミラーゼ」について)

甘酒の甘さはお米のデンプンが分解されたブドウ糖の甘さです。

おかゆに米麹を加えて甘酒を作ると、米麹の持つ糖化酵素「アミラーゼ」がお米のデンプンと米麹自身のデンプンをブドウ糖に分解していきます。

デンプン(多糖類)→ → →ブドウ糖(単糖類)

ブドウ糖(単糖類)に分解されることで甘さが強く感じられるようになります。

酵素とは

米麹は蒸したお米に麹菌を繁殖させたものです。麹菌は繁殖するときに酵素を生産します。そのため米麹には多くの種類の酵素が存在しています。その中の一つがデンプンを分解する酵素「アミラーゼ」です。他にもタンパク質を分解する酵素「プロテアーゼ」などがあります。

甘酒の発酵温度について

糖化酵素アミラーゼの最適温度は62℃付近ですが、例えば「50~60℃」「55~60℃」「60℃前後」の温度で発酵させても甘い甘酒は作ることができます。

これは最適温度の62℃付近でなくても、50~65℃の温度は十分アミラーゼが働いてくれる温度だからです。

温度管理については甘酒を保温する道具で分けるのが良いと思います。

ヨーグルトメーカーのような1℃単位で温度設定ができる場合、62℃に設定する。

炊飯器水筒など温度管理が難しい場合は、「50~60℃」(できれば「55~60℃」)を目安に温度管理をする。

温度管理が難しい中、最適温度の62℃付近を目指すと逆に温度が上がりすぎてしまう可能性があるため、「55~60℃」を目安に温度管理するのが良いと思います。

発酵温度が高い場合

70℃以上の温度で発酵させた場合、酵素が失活(活動を停止)する恐れがあります。

失活後は温度を下げても酵素の活動は再開しないので注意が必要です。

甘酒が甘くならなかった」という場合は、発酵温度が高くなりすぎてしまい酵素が失活してしまった可能性があります。

65℃以上の温度にはならないよう注意しましょう。

発酵温度が低い場合

温度が50℃以下になると糖化する力が落ちてくるだけでなく、「乳酸菌」「雑菌・腐敗菌」の繁殖しやすい温度にもなってきます。

乳酸菌が繁殖した場合、「酸っぱい甘酒」になります。

多少酸っぱさを感じる程度であれば飲んでも問題はありませんが、低い温度で発酵が行われた場合は「雑菌・腐敗菌」も繁殖している可能性があるため注意が必要です。

50℃以上を保つことは糖化のためだけでなく、乳酸菌、雑菌・腐敗菌の繁殖を防ぐためでもあります。

30℃、40℃付近の温度は要注意です。

雑菌・腐敗菌の混入を防ぐ方法

雑菌・腐敗菌の混入を防ぐことも甘酒を作るときの重要なポイントです。

甘酒に使用する道具は消毒する

温度計やしゃもじなど甘酒に使う道具はよく洗ったものを使用するようにしましょう。

できたら熱湯消毒までしてあげましょう。

炊飯器の蓋を長時間、開けっぱなしにしない

空気中には目に見えない浮遊菌がいます。浮遊菌の落下による雑菌の繁殖も考えられます。

また炊飯器にかける布巾は清潔なものを使用したり、作業する場所を清潔に保つことも大切です。

かき混ぜるしゃもじは消毒したものを使う

一度使ったしゃもじはすぐに洗うようにして、清潔なものでかき混ぜるようにしましょう。

なるべく出来たてのおかゆを使う

残飯を使用して甘酒を作る場合はなるべく時間が立っていないものを使うようにしましょう。

まとめ

甘酒の発酵温度は55~60℃を保ちましょう。

温度設定ができる道具の場合は、アミラーゼの最適温度62℃付近で発酵させるのが良いと思います。

甘酒

参考文献

村上英也(編著)『麹学』日本醸造協会、平成30年4月5日第6版発行

宇井 進治「甘酒を原因食とする食中毒に関する基礎的研究 第Ⅲ報 甘酒と食中毒細菌との関連について」『日本衛生学雑誌』14 (5)、1959年、717-723

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