桐生ライフでは今まで「甘酒づくり」についての記事を多く書いてきましたが、今後は「麹づくり」についての記事も書いていきたいと思います。
麹づくりは甘酒づくりと違い、浸漬(お米を水に浸すこと)から含めると出麹(麹の完成)までに4日間かかります。その分、一朝一夕にはいかない難しさ、試行錯誤する面白さがあります。
自分で手作りした麹で甘酒が美味しく出来ると感動が何倍にもなります。
麹づくり研究レポートでは「麹づくりの記録」を書いていきたいと思います。
麹づくりをされる方の参考になれば嬉しいです。
今回の麹づくり内容
- 包み込みから品温が上がるのが遅かったため、出麹時間を遅らせてみた。
- 出麹時間を包み込みから52時間後、56時間後、60時間後に設定し、出麹後に甘酒を作り、味の変化を調べた。
- 熱源(ゆたんぽや電気毛布)は使わず、タオルと毛布の調節で温度管理を行った。
材料
- お米(2021年度産 千葉県産あきたこまち(新米)):1kg
- 種麹(菱六「改良長白菌」):8g(お米に対して0.8%)
浸漬(お米を水につける)
お米を洗米したら浸漬開始。冷蔵庫でなく、常温で浸漬させました。
【10月4日(月)麹づくり前日】
浸漬開始:18:00頃(室温:24℃)
カシを見る
【10月5日(火)麹づくり1日目】
お米の浸漬具合をチェックする方法を「カシを見る」と言います。
お米を拭いて手の指先でこすりあわせるようにして粉々になるかを確認します(カシを見る)。
粉々になったため、次の作業である「水切り」に移りました。
水切り
水切り開始:9:00頃(室温:23℃)(浸漬は15時間行いました。)
途中でかき混ぜたり、角度を変えたりしました。
お米を蒸す(ひねりもちで確認)
お米を蒸す前にまずは蒸籠を温めました(お湯が沸騰してきたら蒸籠を上にのせて蒸籠を温めました)。
火加減はホーロー鍋の底から火がはみ出さないように調節して、最大の火力で蒸しました。
蒸籠が温まったらお米を入れて、蒸気がお米を抜けるのを確認してから蓋をして50分間蒸しました。
蒸しの開始時間:10:40頃(水切りは1時間40分行いました。)
お米の蒸し上がりの様子。
手のひらでお米を潰すようにして「ひねりもち」を作り、蒸し具合を確認しました。
少し硬めでしたが、食べてみて芯がなかったのでOKとしました。あともう10分間蒸しても良かったと思います。
種切り(お米に麹菌を付ける)
種麹は菱六「改良長白菌」を使用しました。
お米の温度が40℃以下に下がったら種麹を振りかけて、こすりつけるように種切りを行いました。
包み込み(お米をひとまとまりにする)
お米に外部温度センサーを差してひとまとまりにして、紙袋の中に入れました。
紙袋を使うとお米がひとまとまりになりやすくて便利です。
包み込み開始:12:00頃(室温:23℃)
品温:31.2℃
保温のため紙袋の上からタオルを巻きました。
さらにタオルの上から膝掛けを巻きました。
室温が20℃以上あるのでゆたんぽや電気毛布などの熱源は使わないで、タオルや毛布を巻いて温度管理を行っていくことにしました。
【麹づくり1日目 14:00頃(包み込みから約2時間後)】
品温:30.7℃(室温:25℃)
品温が下がってきたので、もう一枚毛布を巻きました。
その後の品温経過を記載します。
【麹づくり1日目 20:00頃(包み込みから約8時間後)】
品温:27.7℃(室温:24℃)
品温が下がってきましたが、季節柄、冬の夜のように冷え込むこともなく、品温自体もこれ以上、下がりそうな雰囲気がなかったので、夜中にかけて上がっていくことを期待してこの状態のまま発酵を続けました。
【10月5日(火)麹づくり2日目】
【麹づくり2日目 4:00頃(包み込みから約16時間後)】
品温:28.4℃(室温:22℃)
品温が上がってきたので一安心しました。
【麹づくり2日目 5:00頃(包み込みから約17時間後)】
品温:29.2℃(室温:22℃)
【麹づくり2日目 8:30頃(包み込みから約20時間半後)】
品温:33.9℃(室温:21℃)
切り返し
【麹づくり2日目 11:00頃(包み込みから約23時間後)】
品温:40.0℃(室温:22℃)
品温が40℃まで上がったので切り返しを行いました。
切り返しを行うタイミングは2日目の12:00頃(包み込みから24時間以内)を目安に、品温の上がり方も見ながら考えていたため、このタイミングで行いました。
白い斑点が確認できました。
切り返し後の品温:31.6℃(室温:22℃)
手入れ(その後の品温経過)
【麹づくり2日目 14:00頃(包み込みから約26時間後)】
品温:39.3℃(室温:25℃)
40℃近くになったので手入れを行いました。
【麹づくり2日目 21:30頃(包み込みから約33時間半後)】
品温:40.3℃(室温:22℃)
40℃を超えたので手入れを行いました。
お米同士が固まってきて、白い斑点も目立つようになってきました。
お米が熱を持ってくるようになりました。
ここからは品温の上がり方に応じて毛布やタオルを外したり、巻いたりしながら温度管理を行いました。
温度管理は、品温が徐々に上昇していきながら、40℃前後になったら手入れをしようという意識で行いました。
【10月6日(水)麹づくり3日目】
【麹づくり3日目 3:00頃(包み込みから約39時間後)】
品温:41.4℃(室温:21℃)
手入れを行いました。
熱をかなり持ってきたので、紙袋から出しました。
品温の上がり方に合わせて状態を変化させて温度管理を行いました。
【麹づくり3日目 6:30頃(包み込みから約42時間半後)】
品温:45.4℃(室温:21℃)
手入れを行いました。
【麹づくり3日目 8:30頃(包み込みから約44時間半後)】
品温:33.3℃(室温:21℃)
品温が下がってしまってきたので紙袋に入れてタオル、毛布で巻きました。
出麹(麹の完成)
出麹は包み込みから48時間後が目安ですが、今回は品温が上がってきたのが包み込みから約16時間後と遅かったため出麹時間も後ろにずらすことにしました。
52時間後、56時間後、60時間後で出麹を行い、出麹後、すぐにヨーグルティアで甘酒を作りました。
<ヨーグルティアで甘酒づくり>
麹:200g
水:400g
設定温度:62℃
発酵時間:12時間
4時間後に一度だけかき混ぜる
完成後、冷蔵庫で保存
【麹づくり3日目 16:00頃(包み込みから約52時間後)】出麹1回目
品温:42.6℃(室温:22℃)
【麹づくり3日目 20:00頃(包み込みから約56時間後)】出麹2回目
品温:42.2℃(室温:22℃)
【麹づくり3日目 24:00頃(包み込みから約60時間後)】出麹3回目
品温:37.9℃(室温:22℃)
麹の量が少ないので、品温が上がりにくくなっていました。
甘酒づくり
冷蔵庫で冷やした甘酒をチェック
【10月7日(木)】
●かきまぜた様子(甘酒のゆるさをチェック)
52時間後:ドロッとしている。
56時間後:ドロッとしているが、52時間後と比べるとかき混ぜやすく、ゆるさがある。
60時間後:液体のようにサラサラしている。
●甘さをチェック
52時間後:甘くない、おかゆのような味。
56時間後:52時間後と比べると多少甘くなっている(大差はない)。
60時間後:56時間後と比べて、甘さがしっかりと感じられる。
結果
包み込みから60時間後に出麹したものが一番ゆるさと甘さがあり、甘酒として一番美味しかった。
考察
「包み込みから60時間後に出麹したものが甘酒として一番美味しかった」という結果から、酵素(アミラーゼ)の生産が始まったのは包み込みから56時間後以降と考えられる。
一般的な出麹時間の目安を包み込みから48時間後と考えると、今回の60時間後は遅い出麹時間になる。これは包み込みから品温が上がるまでに時間がかかったことが原因ではないかと考えられる。
包み込みから品温が30℃を下回ることで麹菌の活動が弱まり、その分発芽に時間がかかり、成長、酵素生産が後ろにずれ込み、出麹時間が遅くなったのではないかと思う。
※包み込みから60時間後以降の、例えば64時間後の麹で甘酒を作れば、もっと甘さのある甘酒になっていた可能性も考えられるが、その実験はできなかった(今回の品温経過に対するベストな出麹時間はまだ検討する余地がある)。
次回
次回は包み込み後、熱源を利用して品温が33℃以下にならないようにしながら今回と同じように麹づくりを行う。出麹時間は包み込みから48時間後、52時間後に設定して、今回と同じように甘酒を作り、味をチェックする。
包み込みから品温を33℃以上にすることで麹菌の発芽を促し、今回より早い出麹時間で美味しい甘酒ができるのではないかと思う。
学び
今回の麹づくりからの学びは、包み込みから品温がなかなか上がらなかった場合でも、出麹時間を遅らせることで麹の失敗を防げるという点です。
麹づくり研究レポート、次回もお楽しみに。